千鶴は考えていた。
『どうにかして体を動かさなきゃ!』
最近は何かと菓子やら団子やら甘いものばかり食べている。
『稽古に参加したいけど・・・。』
千鶴の素性は幹部しか知らない機密事項。
一般の隊士に混ざって稽古など出来るはずもない。
『どうしよう?』
そう考えながら屯所前を掃除していた時だった。
千鶴の足に何かがぶつかった。
鞠だ。
「千鶴ちゃ~ん。取ってくれる~?」
屯所内から総司の声がした。
慌ててそちらを見ると総司が両手を挙げて振っていた。
「その鞠~取って~」
足元にある鞠を手にして総司の元に歩いて行く。
「投げて良かったのに」
「わたし、投げるの得意じゃないので・・・」
千鶴から鞠を受け取ると総司はすぐ後ろを向いて
「みんな~行くよ~」
そう言って前方にいる子供達に向かって鞠を思い切り蹴った。
「・・・何をしてるんですか?」
「ん?蹴鞠。知らない?」
「蹴鞠?」
「そう。今は やらなくなったけど、昔は公家や将軍がよくやってたらしいよ?
たしか流儀があるみたいだけど細かいことは知らない。
僕達はただ、円になって蹴っているだけだよ。」
「・・・少し見ててもいいですか?」
「・・ジャマにならなければ・・ね。」
そして千鶴は総司と子供達の蹴鞠を真剣に見ていた。
陽も傾きだした頃、総司が子供達に声をかけた。
「じゃあそろそろ僕は戻るね~」
その声に子供達は散り散りに帰ってしまった。
総司の手には鞠がある。
「沖田さん。その鞠、沖田さんのですか?」
「ん?違うけど?なんで?」
「・・・返さなくていいんですか?」
「あ~~。これね、いつ頃からか知らないけど門前に落ちてたんだよ。
それから誰も取りに来ないし、子供達も遊べるから普段はそこに置いてあるよ」
そう言って前方にある建物の軒下を指差した。
「蹴鞠、真剣に見てたけど・・・やりたいの?」
「えっ!あの・・皆さんで出来たら楽しいかなぁ~っと・・・」
「・・ふぅ~~ん・・。じゃあやってみる?」
かくして中庭では、たびたび蹴鞠で遊ぶ幹部達の姿が見られるようになった。
「千鶴ちゃん、上手くなってきたよね?」
「そうですか?ありがとうございます!」
「これだけ動けばお団子食べても平気なんじゃない??」
「!!!!!」
ニコニコ笑顔の総司に千鶴は何も言えなかった。
スポーツ・・・の秋?

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